センター試験 「軍事」
2007年過去問
センター試験「軍事」
問. 近年の独ソ戦の通史・研究書籍において、ジューコフ最大の失敗と評価されている作戦はどれか。
漢字で表記されるとなんだか別物みたいで悩む。
小さい土星作戦てなんだ、とか悩む子は基礎からやり直しだ。
解答と解説
正解は3。
1. 天王星作戦*1はスターリングラードの包囲戦のこと。スターリングラードの西と南に位置するルーマニア軍を突破し、ドイツ第6軍を包囲殲滅せんとした作戦。ソ連の初めての大規模攻勢作戦であり、ジューコフとヴァシレフスキーのもと、二ヶ月に渡り入念に計画が練られ、火砲約3000門を準備し、42年11月19日に発動された。
2. 小土星作戦*2は1.の後、実施された土星作戦*3の縮小版。当初の土星作戦はルーマニア軍西部に位置するイタリア軍、ハンガリー軍の戦線に攻勢をかけて突破し、さらに南方のドン川沿いにアゾフ海沿岸ロストフへ突進、これを占領し、カフカス方面のドイツ軍の後方を遮断し、ドイツ南方軍集団を広範囲で包囲殲滅するというかなり巨大な計画だった。しかし予想外にドイツ軍の防御は堅く、後退は誘えても突破は叶わなかった。そのため、戦線の規模を縮小し、ドン川まで到達するために実施されたのが小土星作戦である。
4. 星作戦*4は2.の直後、いわゆる第三次ハリコフ攻防戦に実施された作戦。弱体化したドイツB軍集団に攻勢をかけドニエプル川まで進出し、ハリコフ奪還を図ったものである。マンシュタインの巧妙な後退に誘われ一時はハリコフを奪還したものの、その後のバックハンドブロウ*5により壊走。逆に包囲される危機に陥り、結局ハリコフを放棄して撤退する事となる。
3. 火星作戦*6はルジェフ突出部の包囲殲滅を目指した攻勢計画。1.とほぼ同時に進行し11月25日に、ジューコフ自らが立案し実施されたが、 同地のドイツ軍北方中央軍集団第4軍、第9軍の頑強な防御の前に大損害を負ったため中止。
その後、北方中央軍集団は水牛作戦を実施し、突出部からの後退を図り戦線を安定させ、戦力も温存する事に成功。結果的にドイツ軍の戦力の建て直しの機会を与えることになった。ジューコフはこの手痛い失敗を恥じ、回顧録から火星作戦に関する一切を削除している。
土星作戦と火星作戦を同時に実施したのは南部(土星作戦)、中央(火星作戦)の同時制圧を考えたためであったが、結果的にこれが作戦の失敗の原因ともなった。これ以降、ソ連側は必要以上の巨大な作戦を立案せず、戦域を限定して作戦を実施するようになる。
- 参考図書
独ソ戦史 焦土作戦〈上〉 (学研M文庫)
独ソ戦史 焦土作戦〈中〉 (学研M文庫)
独ソ戦史 焦土作戦〈下〉 (学研M文庫)
ためになるなぁ。今年どういう傾向で出題されるかどうかは分かりませんが。