エンジンは兵器である

擲弾兵―パンツァーマイヤー戦記 (学研M文庫)

擲弾兵―パンツァーマイヤー戦記 (学研M文庫)

ハイクの方で「擲弾兵」の話をしたら、無性に読み直したくなったので、再読。大江戸線の中で読みふけっているキモイ奴は僕です。何度読んでも、何かしら気づきがある。
最近ユンガーを読んだので淡々とした描写の戦場が頭の中に広がっていたのだけれど、マイヤーの下手糞な文章を読んでると、別の光景が思い浮かぶ。ユンガーだと、戦場は無音でモノクロ、自分(読者)は透明人間で、弾もすり抜ける。ただ傍観している気になる。マイヤーだと、気がつくともう、真っ黒な硝煙が立ち上り、爆音を立てて砲弾が飛び交う戦場にいる。もちろん自分は生身。横を見るとマイヤーが双眼鏡見ながら、僕に怒鳴ってくる。
マイヤーの生身っぽさは、まぁ文章もあるけれど、多分その行動がごく普通の、よく訓練された兵隊(?)だからだと思う*1。前線で派手な戦闘をしたくてオートバイ狙撃兵に転属したがったり、功名心に駆られて時に無謀な攻撃をしかけたり、そのせいで部下を失って後悔したり。墓前で言葉を無くして泣くのも、部下たちを信頼して容赦ない攻撃を行なってソ連兵や米英兵を狩るのも、妻や子供を見ると死刑に恐怖を感じるのも、どれもマイヤーだ。そういう矛盾みたいなのがあるからこその人間だと思うよ。

憎しみよ、戦いに生まれしものよ、墓前にては黙すべし。
死者の犠牲の気高き意義のみぞ、生を制すものにてあれ。

*1:武装親衛隊員相互扶助協会のために書かれたものでもあると思うので、WSSを擁護しすぎる面もあるにせよ