砂漠で紅茶

結構アバウトな砂漠パスタ話だったのに、皆さんに読んで頂いたようなので、もうちょっと掘り進めて、「そもそも砂漠でパスタの元ネタは?」という所を攻めてみましょう。
そもそもイタリアってなんかグルメそうだし、しかも”あの”イタリアなんだからパスタぐらい食ってたんじゃねーの、という偏見もあると思うのですが、フィールドキッチンすら配備できていなかったイタリアの食糧事情は最低でした。グルメとは程遠い。せっかくのフリーズドライもトブルクに積んだままでしたしね。もったいない。

茹でないパスタ説

さて、砂漠パスタの元ネタの可能性のひとつが、「非常食として持ち込んでいた茹でないパスタ」というやつです。これ海外の軍事フォーラム眺めていて、たまたま目に入った書き込みなので、出典とかさっぱりです。ただの与太話っぽくもあるのですが、ふと焼きパスタ(揚げパスタ?)が思い浮かんだので、意外と真実味あるかもと考えたわけです。
よくあるじゃないですか。イタリア料理屋とか居酒屋でおつまみメニューにあるパリパリに焼かれた茹でてないスパゲッティー。あれなら乾燥に強そうだし、火を通してるからちょっとは日持ちもしそうです。短く切りそろえて、一包みにすれば、ビスケット的な食料にはなる気がしませんか。ちょっと量は少ないですが。

塩水デター説

これはANGELINIから出てるアフリカ戦線記録集みたいな本に書いてあった話なんですが、「井戸を掘ったところ飲料には適さない塩水が出たので、その水でパスタを茹でた」とか。確かにアフリカで井戸掘ってたら、塩水出ちゃったとか話は聞きますが、砂漠のど真ん中で井戸掘らないですよね。仮にオアシスとかの近くで掘ったとして(なんでオアシスの井戸使わなかったかは別にして)、そういう場所で塩水が湧くんですかね。
そもそも、この話だと「砂漠でパスタを茹でた」ことへの上手い理由づけにはなっていても、パスタをいかにしてそこまで持ち込んだかが不明でなんとも言えないです。

イギリスのデマ説

結構個人的に濃厚だとなのが、イギリスのデマ説。当時英国には英国軍政治戦委員会というのがございまして、心理戦で敵地で意図的に流す噂を毎日真面目に考案していたんです*1。要は敵の悪口流すんですが、「イタリア軍兵士たちは連合軍機が空からばらまく投稿票では足りずに自分たちでも印刷している」 なんて噂を流していたくらいですから、当時のイギリスでも「イタリアはヘタリア」と認識していたようです。
このノリで、同盟国イタリアを貶めるためにドイツに対して「イタリアは砂漠のど真ん中でパスタ茹でてたんだってよプギャー」とか噂を流していたとしても、十分あり得そうな感じです。でも、砂漠でパスタって洋書で目にしたことがないので、実際のところそういう噂を流していたかどうかは微妙なところ。

ドイツのなすりつけ説

これもイギリス説と並んでありそうな感じ。敗戦国にはありがちな傾向ですが、負けたことを誰かのせいにしちゃう、というあれです。「アフリカで負けたのはイタリアのせいだよ!」ってしちゃう。精強なドイツ軍は質では勝っていたが、数と味方に負けたのだ、みたいな。あるいは、途中で鞍替えしたイタリアに対して良い感情は当然持てないでしょうから、その批難の意味での悪い噂。
ただ、北アフリカでのイタリア軍の戦いぶりは工兵*2、山岳兵*3、空挺師団*4と結構賞賛されているのも事実。特に、ドイツの野戦将校が指揮したイタリア軍部隊はドイツと同等に戦い抜いています。最終的に「敵」になったとはいえ、共に戦った戦友を貶めるようなことはしないでしょう。


どうでしょう。なんか納得できる説ありました? 「いやいや俺の持ってる資料じゃこうだ」とか「こんな説も」とかあったら教えてください。

*1:アメリカなら戦略事務局士気操作部。

*2:ハルファヤ峠で88ミリを擬装したのはイタリア工兵部隊です。

*3:帽子に羽根付けたアルピーニが有名。現代のイタリア山岳兵なら間違いなく最強だと思うのですが。

*4:フォルゴーレ!