オススメゾンビ映画 ― 正しいゾンビ映画の楽しみ方

ごきげんいかがですか? 水野晴郎です。さあ、今日は特別企画で、素晴らしい映画をたっぷりとご紹介していこうと思います。
皆さんお待ちかねのゾンビ映画です。ゾンビというとですね、腐ってしまってこんな風にドロドロになった動き回る死体を想像するかもしれませんが、本来はブードゥー教における怪物全般を指すんです。ご存知でしたか? いやー、想像するだけでも怖いですね。
面倒なのでここからは普通に書きます。まぁそんなWikipediaに書いてありそうなことはどうでもいいので、ゾンビ映画大好きな僕が、ゾンビ映画見たことないあなたにオススメのゾンビ映画について数回に分けご紹介。彼女と見ても彼氏と見ても、一人で見てもいい。お子さんと見るのはどうですかね。そこはご家庭の情操教育の方針にお任せしますね。
ネタバレは避けたいので、大枠以外はあんまり触れないで話すのでそこんとこよろしく。
ゾンビ映画って言ってもホント無数にあるので、なるべく王道中の王道、レンタルしやすそうな、Amazonにありそうなタイトルに絞ってご紹介。今回はロメロ御大の「ゾンビ三部作」。この世にゾンビを作り出した天才の作品をオススメします。
 

NIGHT OF THE LIVING DEAD

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド スペシャル・エディション [DVD]
人を食う動く死体、という人類の文化の中でもトップクラスの化け物を初めて登場させたのは、ジョージ・A・ロメロ御大の『NIGHT OF THE LIVING DEAD』。一度ゾンビになってしまえば深い背景なんかなくったって家族や隣人、子供が襲ってくるというショッキングさが凄い。
しかもスーツなんかなくても死化粧と血糊であっという間にゾンビになれる。財布にも優しいという史上空前の発明と言っていい。おかげでインディペンデント系のプロダクションや若手の監督なんかの撮るホラー映画にはやたらとゾンビが登場するようになった。
そんな本作は怖いか怖くないか、で言うと視覚的にも心理的にも怖くない。が、一軒家に立て篭る数人の密室劇を描くだけで、よくここまでテンポよく面白くしたよなぁ、と感心すること間違いない。


本作を見る上で気をつけておきたいのが、同名のリメイクが数本存在する、という点だ。現在は絶版でうっかり間違える恐れがないものを除くと、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀』と『NIGHT OF THE LIVING DEAD : 30TH ANNIVERSARY EDITION』の2本が代表的なリメイク版。
『〜死霊創世紀』の方は、ロメロ作品では欠かせない特殊効果アーティスト、トム・サヴィーニが1990年にリメイクしたもので、基本的にストーリーは同じで微妙にオチが違う程度。脚本はロメロ御大だし、サヴィーニの特殊メイクを見たいなら別にこっちでも問題はない。
『30TH ANNIVERSARY EDITION』がとんでもない食わせ物で、記念版とか謳いながら実は一切ロメロが絡んでいない。「当時の未公開映像が」とか言いつつ、後から脚本家が勝手に撮ったフィルムを初代の『NIGHT OF THE LIVING DEAD』にツギハギした、もの凄く出来の悪い一本。こんなの最初にうっかり見てしまうとそれ以降ゾンビ映画が見る気失せること間違いない。注意してほしい。

DAWN OF THE DEAD

「ゾンビ」(1978)ディレクターズ・カット・エディション [DVD]
日本では『ゾンビ』の名前で知られる、ロメロ御大のゾンビ三部作の二作目。三部作全てが広さの違いはあれ、基本的に密室劇になっていて、第一作目では一軒家だったが、今作ではやや広くなってショッピングモールとなる。そう、ショッピンモール。もはやゾンビ映画の古典とも言える、
「ショッピングモールに立て篭る」という形式が初めて撮られたのが本作なのだ。
ゾンビのスタイルが固まってきたこともあって、『NIGHT OF THE LIVING DEAD』よりも怖さはもちろん、特殊効果やコメディ的な要素をちりばめ、アクション要素もありと、非常に見ていて楽しい一本に仕上がっている。特殊メイクや効果を担当したトム・サヴィーニーが実は役者として出ているところもファンなら押さえておきたい。
本作で重要なのは、舞台がショッピングモールになったことで生まれる人間の欲の描き方だ。ゾンビ映画の体裁を取りながら、実はどす黒い人間ドラマをやってのけたわけ。「地獄がいっぱいになると死者が地上を歩き出す」という名台詞が出てくるのが本作。怖いのはゾンビより人間だ*1


ちなみに、本作はアメリカ・イタリアの合作扱いになっていて、ロメロ版の他にイタリアのホラーの迷匠ダリオ・アルジェントによる編集版がある。アルジェント編終版は重要な人間ドラマがさくさく削られてただのテンポのいいホラーアクションになって、ハッピーエンドに改変されるなど、もはや別物。水野晴郎じゃないが、「現代社会へ向けた監督からのメッセージ」を読み取りたいとか、ロメロ一流のブラックユーモアを味わいたい人は是非ロメロ版を見て欲しい。

『DAY OF THE DEAD』

死霊のえじき 完全版 [DVD]
邦題では『死霊のえじき』。ゾンビ映画なんだし、死はともかく霊じゃないのだが、まぁ柳の下のなんとかを狙った配給会社のやったことなので仕方がない。三部作の最終作であり、磨きに磨きをかけたゾンビ映画の究極の完成形とも言える。ともかくはっちゃけたサヴィーニの仕事ぶりが素晴らしい。内臓も血液も文字通り出血大サービスこの上ない。
舞台は地下のシェルターとなり、登場する人間の数もぐぐっと増えた。人間が増えた分、人間ドラマも複雑さを増し、軍人、科学者、民間人の三者が延々互いの利害を主張して終始重苦しい空気に包まれている。この全体に漂うドヨーンドヨーンとした空気は本当に素晴らしい。自分のミスでゾンビに齧られる軍人がいたり、ゾンビの研究に夢中でゾンビを飼育し始め、餌に人間の死体を与えるマッドな博士だの、ともかく楽しくなってしまう救いようのなさがたまらない。
さて、十二分に楽しい本作だが、実は究極にふさわしい演出がある。ゾンビと人間の交流だ。いやゾンビだって人間だしってそれはそうだが、はなからこっちを食うことしか考えてない奴と仲良くするのはなかなか難しいぞ。ともかく、劇中登場するバブというゾンビとのヒューマンドラマ?はなかなか。後々ゾンビを飼育したり、ゾンビとの触れ合いをネタにしたコメディー映画なんかも出たことを考えると、やっぱロメロ御大の先見性は凄いのだ。


ほんでもってこれまた『DAY OF THE DEAD 2』という自称続編があるのだが、ロメロノータッチな上につまらん映画なので、見なくても全然問題ない。

ジョージ・A・ロメロ

映画じゃなくて、監督の名前。ともかくゾンビ映画では凄いことこの上ないのが、なぜか御大、ゾンビ以外の映画では途端に凡作になる。下手すると駄作になるので、つくづくゾンビに見入られた人なんだろう。一時『バイオハザード』を監督するなんて噂が流れてぬか喜びしたこともあったけど、まぁ御大はハリウッドで大作映画撮るなんて似合わない人なのだ。

ところで、(ロメロ)←この顔文字、御大そっくりじゃありません?

*1:上手いこと言ったぜ的な