オススメゾンビ映画番外編 ― 明後日へ向かう英国ゾンビ

今日は水野節はなしでさくさくいっちゃうからね。
英国と言えばホラー。ホラーと言えば英国。ハマー・フィルム・プロダクションを知る人は誰だって当然そう思うはず。なんてったってピーター・カッシングクリストファー・リーって二大怪奇爺さんがいたんだから*1。そういや二人ともスターウァーズ出たんだよなぁ。ともかく、英国でホラー撮られなかったらテレ東がアニメ流さないくらい異常なことだ、とアメリカ人も言っていた。そんな感じであるよ。
しかし、しかし、なぜかゾンビ映画を撮るとハマーを含めて斜め上になってしまう。もうこれは何かの呪いだと思うのだけど、ともかく斜め上なんだよこれが。

『吸血ゾンビ(THE PLAGUE OF THE ZOMBIES)』

吸血ゾンビ [DVD]
もう名前からして何かがおかしいことに気がつくのだが、あえて言うよ? 吸血するのはドラキュラじゃないかなぁ。邦題が悪いと言えばそこまでなんだけど。ハマーさんですらこの有様です。内容自体は凡庸だけど、ハマーらしい格調高いホラーになっていて、奇麗なお姉さんが墓の中からウボァーって出てくる所とか、非常にドキドキする。ゾンビのメイクも当時としては結構レベルが高い。
とは言ったものの、コーンウォールののどかな田園地帯でブードゥーがどうのうこうので、儀式の時にハイチから連れてきたというシャーマンみたいなのが3人掛かりでドンドコドンドコ太鼓叩くのはやっぱり何か違う。「村人をゾンビにして働かせる」とか悪役の目標が凄く小さいのもなんというか。もうちょっと、こう、何とかできたはずだろ。後々雑誌なんか見てると監督自身が「最低の映画だった」とか仰っているので、まぁ最低だったんだろう。ちなみに特に吸血なシーンはない。

スペースバンパイア(Lifeforce)』

スペース・バンパイア [DVD]
名前のまんま。Wikipediaだと何故かがんばって褒めているんだけど、映画を簡単に説明すると宇宙から来たドラキュラに精気吸い取られて裸のお姉さんがキャッキャウフフである。一応ゾンビも出てくる。
かかってる金はA級でスタッフもなまじ豪華なだけに、中途半端なことこの上ない。斜め上を通り越して、そのあと地面に叩き付けられた感すらある。同時期にアメリカで『バタリアン』が作られたなんてとても信じられない。まぁ、マチルダ・メイの裸が凄いので見る価値がないとも言えない。


ここまで来てふと気がつくと思うのだが、何故か英国ゾンビ映画には吸血鬼がぶらさがってくるのだよ。吸血鬼が。クリストファー爺さん、あんたは罪な人だよ。「ゾンビ→ホラー→ドラキュラだろ!」って英国人のDNAに刻み付けちゃったんだよ。
ともかくこんな感じで1990年代くらいまで英国ゾンビはへろへろである。関係ないが、英連邦の一部である豪州はなぜかやたらと食人映画が多い。なんでだろうなぁ。これも先祖のDN(ry。あんまり言うとまずいからやめておこう。
そんなこんなで2000年代に入ってもやっぱり斜め上なのだ。

28日後......』

28日後...(特別編) [DVD]
正確に言うとゾンビ映画じゃないけど、まぁ、その後のゾンビ映画でこの系統が流行ったので一応ゾンビ映画ということに。話自体は別に血がどばどば出る訳でも、ドロドロ腐っちゃう訳でもなく、なんというか人間ドラマなのだけれど、ゾンビ(じゃないけど)がダッシュしたりとかなかなかの新機軸を見せてくれた映画ではある。ただなぁ。走るのはなぁ。ゾンビは走らないってゾンビの神様が言ってるからなぁ。いやこの映画はゾンビじゃないけども。ともかく走るのはいかん。走ったら次でご紹介するアホ映画か成立しなくなる。あとミイラも走ったらダメだと思う。走っていいのは半魚人とドラキュラくらいだな。
この時点ではまだ離陸し始めたくらいで、斜め上までは到達してない。

『Shaun of the Dead』

ショーン・オブ・ザ・デッド [DVD]
勢い良く斜め上へと踏み出した第一歩。ただしこれは良い意味で斜め上。ホラーコメディーは色々あったが、徹底的にお約束しながら突き抜けたのは珍しい。随所にロメロへの憧憬の念が見て取れるんだけど、時折差し込まれる分かり難い英国ネタが斜め上感を煽る。そのくせ感動を煽るようなネタも織り込んでくるので油断ならない。イギリス人の理解できないユーモアセンスと何かがおかしいゾンビ感が程よく混ぜ合わさった良作だ。
しかし、そもそもクリケットのラケットで殴る威力が分かりにくい。バットで殴るのと同じかなぁ。ともかくこの映画を見たら護身用にクリケットのラケットを一本買って置こうと思うのは間違いない*2

『Boy Eats Girl』

多分日本盤はないんだけど、要はタイトル通り、高校生の男が色々あって死んで復活して女友達やら彼女やらをムシャムシャ襲う話であるよ。最終的にはヒロインの家で女子高生VS男子高校生ゾンビになるんだけど、芝刈り機でゾンビ刈って噴水のごとく赤い液体が飛び散るあたりが一番金がかかったそうで、多分このシーンが撮りたくて作っただけだと思われる映画。
序盤の安っぽいティーンズドラマ風な感じからゾンビ映画になる流れは面白いような気もするんだけど、しかし英国だしなぁと思っていると案の定、という斜め上な意味で期待を裏切らない。
あ、これ冷静にパッケージ見たらアイルランドだった。


もういいやめんどくせ。ともかくこんな感じなんだよ、英国ゾンビ。でも、何と言うか独特の斜め上感があって、アメリカゾンビの映画を見て8割方味わうあの空虚な感じとは違ったポジティブながっかり感のような、そんな感覚が味わえるよ。
普通のがっかり感じゃ物足りない! という猛者は是非英国ゾンビをどうぞ。

*1:片方はまだぴんぴんしてるけど

*2:ゴルフクラブでも良い