共産趣味者入門ガイド1

やぁ同志能無し諸君! 先日愚弟のレポートのためにいろいろと革命的講義をしてやったのだが、これがまた面白い程理解していなかった。まぁ奴は反ソ反共の無知な帝国主義者なので仕方がない。千葉にある東京の名前のついたテーマパークで浮かれているがよいのだ。
そんな奴は放っておいて、今回はわざわざこのダイアリーを読んでいるような、共産趣味者に憧れているけれど、基礎的なこともよく分からない、という同志たちのために入門解説をしてみるよ。なんでそんなこと思いついたかというと、丁度蔵書整理中で懐かしい資料が色々出てきたからだよ。

何で同志っていうの?

ソ連邦では西側諸国と違って万民が平等なんだ。だから、「Sir」とか「Lord」のような呼びかけはせず、誰に対しても「同志」か「市民」と呼びかけるんだよ。

共産主義って何だ?

さて、同志たちはそもそも「共産主義」が何か分かるかな。社会主義の違う名称? 平等思想? ニートの理論? 資本主義のアンチテーゼ? じゃあ「資本主義」って何だろう。「社会主義」は何だろう。
まず、資本主義というのは、産業革命以降に西欧*1に出現した段階の経済体系のこと。対して、社会主義とは私有財産制を廃止することで、資本主義のマイナスの側面を是正しようとする政治思想のこと。資本主義自体も現在では思想的な一面を持っているけど、本義としては「主義」とはいうものの、システムの名称であることに注意が必要だ。


その社会主義の中でも、ドイツの学者マルクスエンゲルスが提唱したものを「科学的社会主義」といい、それ以前の「空想的社会主義」と区別している。ただし、空想社会主義と名付けたのはマルクスエンゲルスであり、そもそも何が空想社会主義なのか明確に定義はされていない。迷ったら「マルクスエンゲルスの考えたのが科学的社会主義」と考えればいい。
共産主義とは基本的にはこの科学的社会主義マルクス主義)に拠る政治思想。じゃあ、何が違うのかというと、共産主義の前段階が社会主義共産主義はいわば目標であり、到達点(それを追求する政治運動)でもあり、社会主義の答え。そして、共産主義が実現すると「国家」はなくなる。なぜなら、科学的社会主義の理解では、国家や政府というのは支配階級が被支配階級を搾取抑圧するための機構だから。したがって「政治体制」はおろか「政治」自体も消滅してしまうことになる。
つまり、ソ連邦で「実現した」のは「社会主義」であって「共産主義」ではない*2。逆に言うと、共産主義と資本主義ではそもそも現実の体制に則った思想か、理論上の思想か、という根本的な違いがあるので、「共産主義の反対が資本主義」っていうのも安易な発想だ。


ちなみに、修正主義とは主にマルクス主義の「暴力革命必然」という理論を否定して社会改良を推進し、議会選挙に勝利することで社会主義の実現を目指す「社会民主主義」のことを指すんだ*3
反動主義なる語は反動(進歩に対する抵抗・逆行)に「主義」をつけただけだと思われるので、特に解説はしないよ。
修正主義のように暴力革命を否定するということは、ブルジョアジーの排除を拒否し、卑屈な妥協を意味することになるから、我々はこういう裏切り者を排撃しなければならないんだね。
どうかな? お分かり頂けたかな。

スターリン主義スターリニズム)は共産主義社会主義と違うの?

これはなかなか難しいんだが、簡単に言ってしまえば、スターリン社会主義マルクスレーニン主義の逸脱と見る連中が、「正当な社会主義から逸脱した思想」として名付けたんだな。
ただ、上でも述べている通り、共産主義が実現すると国家はなくなるわけで、ソ連邦社会主義に基づくプロレタリアート独裁は共産主義に移行するまでの仮の体制として把握していた。これが、理論にいう「共産主義の実現」に失敗し、体制として安定化する過程で出現したのがスターリン主義、広く理解されているところの「(ソ連型)社会主義」と見なすこともできる。

*1:乱暴に言ってしまえばイギリス

*2:とはいえ、このいわゆる「ソ連社会主義」はとんでもなく複雑なので、迂闊に「社会主義」とひとくくりにするのは危険

*3:これとは別に歴史学上の「修正主義」とは旧説を否定する学説のことを指す場合もある