共産趣味者入門ガイド2
やぁ、同志能無し諸君! 入門ガイド1で共産趣味のほんの入り口をお見せしたけど、どうだったかな!? ハハハッ(甲高い声で)。いやいやそうじゃねぇんだよ、って思われた同志共産趣味者もいると思うけれど、僕はコミンテルンに忠誠を誓っているので、中共なんかの意見には聞く耳を持たないんだ。つまりそういうわけなので、異論がある場合はルビヤンカで自己批判を行って欲しい。
帝国主義って何?
しばしば共産趣味同志たちが口にする「帝国主義」というのは、資本主義の発展の最終段階を指すんだ。
封建制が終わり新たな時代の主役となったブルジョアジー(資本家)は、相互の激しい競争と労働者からの苛烈な搾取を通じて巨大な財閥、独占企業を形成する。その力は一資本主義国内にとどまらず、巨大な市場を求め国境の外部へと拡大する。つまり、外国を市場として支配し、その民から搾取する。
このように外部へと市場を求めて膨張を続ける段階が帝国主義。この崩壊が社会主義革命ってことだね。
レーニンって偉いの? スターリンとどっちが偉いの?
これは1で解説した社会主義の話にも関わってくる部分だけれど、何を持ってして「相手より優位である」、と位置づけるかで偉いかどうかは変わってくる。同志レーニンは政治的な意味では最高指導者だが、体制の創始者とは言い難い部分がある。
一般的に社会主義「体制」と呼ばれるものが作られたのは、同志スターリン時代のロシア。他の社会主義諸国のそれは、多かれ少なかれその劣化コピーに過ぎない*1。部門別工業省、集団農場、「書記長(総書記)」職の地位、ノーメンクラトゥーラ……。歴史で耳にする、いかにも社会主義的な、こうしたものが作られたのは、全て同志スターリンの時代だ。
だからこそペレストロイカの際、「レーニンに帰れ」というスローガンが打ち出されたわけだ。結局その「レーニンのソ連」、即ち「非スターリンのソ連」は実現しなかったけどね。
「ソヴィエト」って何? 国の名前?
「♪ソーはソ連のソー」なんて歌があったかは定かではないが、ソ連のソはソヴィエトのソだ。「ソヴィエト」とは議会や評議会を意味する単語。単語自体に特別な意味はなく、そのまんま議会と理解しておけばいい。「じゃあソヴィエト連邦って議会連邦? 意味ワカンネ」と思うかもしれないが、これは体制として確立された社会主義を象徴する、実に分かりやすい名前なのだよ。
「ソヴィエト連邦」とは「ソヴィエト共和国」の連邦体(サユーズ)*2という意味で、「ソヴィエト共和国」とは各級のソヴィエトが三権を掌握する体制をとる共和国のことをいう*3。このように、「最も民主的な機関」であるソヴィエトに三権を従属させる制度を民主集中制と呼ぶ。ソヴィエトではプロレタリアートによる独裁が行われているので権力が集中することは何の問題もなく、むしろブルジョワジーに権力を奪取される可能性がある権力分立を否定したわけだ。
ちなみにソ連邦に参加していた共和国は全部で17カ国あり、
- ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国
- エストニア・ソビエト社会主義共和国
- ラトビア・ソビエト社会主義共和国
- リトアニア・ソビエト社会主義共和国
- 白ロシア・ソビエト社会主義共和国
- ウクライナ・ソビエト社会主義共和国
- モルダビア・ソビエト社会主義共和国
- グルジア・ソビエト社会主義共和国
- アルメニア・ソビエト社会主義共和国
- アゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国
- カザフ・ソビエト社会主義共和国
- ウズベク・ソビエト社会主義共和国
- トルクメン・ソビエト社会主義共和国
- タジク・ソビエト社会主義共和国
- キルギス・ソビエト社会主義共和国
- ザカフカース・ソビエト連邦社会主義共和国
- カレロ=フィン・ソビエト社会主義共和国
となる。一見やたら細かいようにも思えるが、これでも正直民族の分類ができているとはいえず、共和国内自治共和国、民族管区に自治単位なしの民族と次から次へと構成単位が追加されていくことになる。こうしたロシア人と多数民族と少数民族、ソ連邦と連邦構成共和国政府と各共和国内の自治共和国政府とで三角、四角関係になり、一気に爆発したのがソ連邦崩壊後の東欧のゴタゴタ。ソ連邦成立時に民族問題を解消できればよかったが、ややこしすぎて正直不可能に近い。
色分けされているのが各共和国(SSR)を表している。この集合がソ連邦
稀に言われる「ソヴィエト・ロシア」とは、この中のロシア・ソビエト連邦社会主義共和国を指す場合が多い。こうした各共和国や自治共和国はもちろん、州や村までに「ソヴィエト」があって、その全てが国家主権の享有主体になるわけだ。ちなみに、勘のいい人は気がついたかもしれないが、カザフ、キルギス、ウズベク、トルクメン各共和国には「スタン」をつけると現在の国名になる。「スタン」には「〜王家」とか「〜の土地」って意味があり、ソ連邦時代には民族自由主義的であるとして、使用することができなかったんだね。
これら数々のソヴィエトの頂点に立つのが「最高ソヴィエト」。連邦の最高機関であり、他のソヴィエト同様、民主集中制。ちなみに連邦会議と民族会議の二院制。なお、この議長がソ連邦の(形式上の)元首*4。議会と言うからには何かしら投票によって決定していたかというと、事実上、党の決定事項に対して追認を与える(拍手する)場所だった。巨大かつ多民族なソ連邦全土の意見を集約する場所として機能していなくもなかったけれど、実際の所、個々の要求全てに答えていては、プロレタリアート独裁が機能しなくなり、民族主義的な多数決思考に陥ってしまう。結果的に、党の決定事項を確認する場所となっていたわけだ。